ここでは波の式 y=sin(kx-wt) を y=sin x から出発して導出します。そして「動く波」を表すイメージをアニメーションによりつかみます。kやwの意味するところを理解して、ややこしいと感じていた気持ちがすっきりとします。
ここで理解する式:$y=\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x-\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\right)$
ここで理解する式は
$$y=\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x-\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\right)$$
です。しかしこの状態だとごちゃごちゃしていてよくわからないので、
- $x$ の係数を 波数:$k=\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}$
- $t$ の係数を 角周波数:$\omega=\displaystyle\frac{2\pi}{T}$
と置いて
$$y=\sin(kx-\omega t)$$
と簡単にして、しかも次の章ではさらに簡単に $k=1$, $\omega=1$ の場合を考えます。
$y=\sin(x-t)$:時間 $t$ の経過とともに波が動くイメージ3選
ここでは簡単のため、波の式の一般形
$$y=\sin(kx-\omega t)$$
のうちの $k=1$, $\omega =1$ で考えます。すなわち、
$$y=\sin(x-t)$$
ですが、この式で表されるグラフが時間 $t$ の経過とともに動くイメージを3つの方法でつかみます。お気に入りを見つけてください。
イメージ1:$t$ を動かしながら愚直にグラフを書く
最も単純で強力なイメージです。$t$ を動かしながら愚直にグラフを書き、パラパラ漫画を作ります。例えば、$t=0$ の時は式は $y=\sin x$ でグラフは、
です。これを基本形と呼ぶことにします。
そして、$t=\displaystyle\frac{\pi}{6}$ のときは式は $y=\sin\left(x-\displaystyle\frac{\pi}{6}\right)$ でグラフは、
ですし、$t=\displaystyle\frac{\pi}{3}$ のときは $y=\sin\left(x-\displaystyle\frac{\pi}{3}\right)$ でグラフは、
です。
例えば上図 $y=\sin\left(x-\displaystyle\frac{\pi}{3}\right)$ の $x=\displaystyle\frac{\pi}{3}$ は基本形 $y=\sin x$ の $x=0$ と同じ $y$ の値 $(y=0)$ です。つまり、グラフが右側に平行移動してます。
これをパラパラ漫画にすると↓のアニメーションのようになります。
これまでの説明をまとめて絵にすると次のようになります。
イメージ2:単振動と絡める
$t=0$ のときの波の形
$$y=\sin x$$
が原点での単振動でどんどんと押し出されるイメージです。このような感じです。
ちなみに、なぜ時計回りに回っているか分かりますか?それは今書いているグラフが
$$y=\sin(x-t)$$
だからですが、ピンときますか?
原点 $x=0$ で話をすると、時刻 $t$ が進むと $\sin$ の位相は $-t$ です。つまり、負の方向に進んでいますので、時計回りです。
イメージ3:3次元空間で捉える
$y=\sin(x-t)$ を空間図形としてとらえ、$t=t$ 平面で切っていくイメージです。
平面 $t=t$ は橙の平面です。$t=t$ という表現は、$t=0$ とか $t=1$ とかそういう意味です。時刻 $t$ が進むと橙の平面が後方に移動していきますが、その時々の青の3次元グラフとの交線が右側に書かれていて、右側に進んでいます。
$y=\sin\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x$:波長の導入
$x=\lambda$ で1周するから波長
$\lambda$ は波長ですから $x=\lambda$ 進むと元の位相に戻ります。つまり、波長 $\lambda$ である波の式は基本形 $y=\sin x$ を次のように書き換えると得られます。
$$y=\sin\frac{2\pi}{\lambda}x$$
すなわち、$y=\sin\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x$ の $x=\lambda$ は基本形 $y=\sin x$ の $x=0$ と同じ $y$ の値 $(y=0)$ です。つまり、グラフが伸縮しています。
これを絵にすると次のようになります。
$\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}$ の意味をもう少し深く:波数
$\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}$ を $k$ と置いて
$$y=\sin kx$$
とします。まずは簡単のため、$k=1$ としてそのグラフを書けばそれはもちろん、
です。$k$ の値によって波の形はどのように変わるでしょうか。↓のアニメーションです。
$k$ の値と波の形には次の関係があります。
$2\pi$ の中に波が $k$ 個ある。
このことから $k$ は
波数
と呼ばれます。
波数という言葉は高校物理ではおそらく出てこないので無理に覚える必要はないですが、このような周辺知識があると理解に厚みが出てきます。
$y=\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x-\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\right)$:周期の導入
$t=T$ で1周するから周期
$T$ は周期ですから $t=T$ 経つと元の位相に戻ります。つまり、周期 $T$ である波の式は基本形 $y=\sin(x-t)$ を次のように書き換えると得られます。
$$y=\sin\left(x-\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\right)$$
ただし、せっかく先の章で波長 $\lambda$ を調整する術を得たのですから、それもあわせて記述すれば、
$$y=\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x-\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\right)$$
となります。すなわち、$y=\sin\left(\displaystyle\frac{2\pi}{\lambda}x-\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\right)$ の $t=T$ は同じ式の $t=0$ と同じ $y$ の値です。
これを絵にすると次のようになります。
$\displaystyle\frac{2\pi}{T}$ の意味をもう少し深く:角周波数
$\displaystyle\frac{2\pi}{T}$ を $\omega$ と置いて
$$y=\sin\omega t$$
を考えます。これは、$2\pi$ という位相を $T$ という時間で割っており、速度の位相版のような感じですね。これを
角周波数
と言い、$\mathrm{[rad/s]}$ という単位で表します。これに向きの概念を入れて
角速度
という場合もあります。
2次元に広がる波
これまでは1次元に進む波について見てきました。これは例えば弦の振動です。一方、水面に広がる波のように2次元に進行する波も同様に考えることができます。入試ではこの式自体というよりは波源が2つある場合の干渉問題が取り扱われますので、ここでは
水面の波も同様の式なのだな
くらいで見ておいてもらってよいと思います。
1次元から2次元へ
1次元のときの波の式は
$$y=\sin(kx-\omega t)$$
でした。2次元になってもこの式の形は全く同じであり、上記の $x$ の代わりに波源からの距離 $r$ を持ってきて
$$y=\sin(kr-\omega t)$$
となるだけです。例えば波源が原点 $(0,0)$ なら、
$$r=\sqrt{x^2+y^2}$$
です。
式をアニメーション化する
上式
$$y=\sin(kr-\omega t)$$
をアニメーションにすると↓のようになります。
まとめ
教科書では波の式は
$$y=\sin\left(\frac{2\pi}{\lambda}x-\frac{2\pi}{T}t\right)$$
と書かれていて文字がたくさんあり、理解するのはもちろん、覚えるのも大変だと感じますが、波の基本形である
$$y=\sin x$$
から出発して、波が動くイメージや波長、周期のイメージを取り込むことで、覚えなくとも
$$y=\sin\left(\frac{2\pi}{\lambda}x-\frac{2\pi}{T}t\right)$$
が書けます。
そのイメージを今一度総まとめすると次のようになります。
関連記事:波の反射
波が反射して干渉する場合、進行しなくなります。あっち行くのとこっち行くのとが重なるから止まって見える、そんな感じです。そのことを↓の記事ではアニメーションと式で理解します。
コメント