ここでは、導体棒が移動する際の誘導起電力 V=vBl と電磁力 F=lIB について考えます。それらは両方ともローレンツ力から導出します。また、誘導起電力は電磁誘導の法則からも導出できます。これらの関係の全体像を上部に示した一枚の絵で理解します。
これにより、ややこしい電磁気の公式がすっきりと理解でき、またたとえ忘れても自力で導出し、思い出せるようになります。
導体棒の移動は、2025年共通テスト↓でも出ました。
誘導起電力を電磁誘導の法則から導出する:巨視的見方
誘導起電力 V=vBl を電磁誘導の法則 V=dΦdt から導出します。

電磁誘導の法則:V=dΦdt
電磁誘導の法則は次のようなものです。
コイルを貫く磁束 Φ[Wb] が時刻 t[s] の関数として変化するとき、
V=−NdΦdt[V]

上式の負号は、起電力の向きが時速の時間変化と逆向きであることを示していますが、実際の問題を解くときには向きと大きさを別々に求めた方がやりやすい場合が多いです。そのため、以後の電磁誘導の法則の適用場面では別々に考えます。
導体棒の場面に当てはめると?
今は、導体棒が移動する際の誘導起電力を考えています。このケースは上記の「コイル」では一巻き (N=1) であり、棒が移動することによりそのコイル内の磁束が増減します。
1秒間に増える面積 S は lv
導体棒が移動することにより、コイルの面積が増え、結果としてコイルを貫く磁束が増えます。導体棒は1秒間に v だけ移動するので、コイルの面積は1秒間に
S=lv
だけ増えます。

1秒間に増える磁束 Φ は vBl
磁場は B[Wb/m2] なので、コイルを貫く磁束 Φ は1秒間に
Φ=vBl
だけ増えます。

1秒間に増える磁束が誘導起電力の大きさ:V=vBl
よって、
V=vBl
が言えました。
なお、上記では Φ を「1秒間に増える磁束」として扱いましたが、より正確に表現するなら「1秒間に増える磁束」は dΦdt です。そして、面積 S=lv としたところも、これは「1秒間に増える面積」なので、dSdt です。そして、面積 S は本来は横幅を x と置いて、S=lx です。これらに注意して正確に表現するなら、
V=dΦdt=d(BS)dt=Bldxdt=Blv=vBl
ですが、余り物事を難しく考えない方が良いです。
誘導起電力をローレンツ力から導出する:微視的見方
誘導起電力 V=vBl をローレンツ力 f=qvB から導出します。

ローレンツ力 f=qvB
ローレンツ力とは、荷電粒子 q[C] が磁場 →B[Wb/m2] 中で速度 →v[m/s] にて動いているときに受ける力 →f[N] で、
→f=q→v×→B
です。× は「外積」を表す記号で、詳しくは数学的目線ですが下記↓の記事で述べています。
いま、簡単のため →v と →B の向きが垂直の場合を考えると、→f の大きさは単純に
f=qvB
であり、力の向きは、→v から →B の方向に右ねじを回してねじが進む方向です。

平衡状態を考えると電場 E=vB ができている
このローレンツ力により荷電粒子は移動していきますが、いま、この荷電粒子は導体棒中にあるので、導体棒の端に寄ることになります。
ここで +q は a の側に寄ります。一方、便宜上 −q も考えることにして、それらは b の側に寄ります。そうすると導体棒には電場 E が a→b の向きに発生します。

電荷は永遠に端に寄り続けるわけではなく、あるところ、具体的にはローレンツ力 fq=qvB と、電場による力 fE=qE がつり合うところまで端に寄ります(平衡状態)。

このつり合いより、導体棒の中の電場の大きさ E が求まります。
qE=qvBE=vB
電位差は電場に距離を掛けると得られる:V=El=vBl
ab 間の電位差 V は、電場 E が分かったので、これに長さ l を掛けると得られます。
V=El=vBl
電磁力をローレンツ力から導出する:微視的見方
電磁力 →F=l→I×→B をローレンツ力→f=q→v×→B から導出します。

電磁力は電流が受ける力であり、これまで見てきたものとは逆の発想になっていることには注意してください。
つまり、誘導起電力は外力により電荷が力を受けた結果生じるもので、発電機の原理です。
一方、電磁力は流れている電流が力を受けているもので、モータの原理です。
電流を微視的にとらえると、→I=−enS→v
この式は覚えておいた方が良いです。微視的見方と巨視的見方を行き来するときによく出てきます。電流とは微視的に言葉で表現すれば、
1秒間に通過する電荷量
です。
いま、導体棒の電子密度は n [個/m3] と与えられていますので、これに1秒間に通過する電子の体積 V1 を掛ければ、1秒間に通過する電子の個数 N1 になります。V1 は、断面積 S に1秒間に移動する距離 v を掛ければよく、すなわち V1=Sv なので、
N1=nV1=nSv
です。(後で式(2)が出るため、区別するために添え字をつけました)
N1 は1秒間に通過する電子の数なので、これに電子の電荷量 −e を掛ければ電流 I になります。向きもあわせて考慮すれば、
→I=−enS→v
です。
電子が受けるローレンツ力を考える:→f=−e→v×→B
電流の正体は電子の流れなので、微視的に電子を考えます。いま、電流が b→a に流れているとすると、電子は a→b に流れています。ローレンツ力は
→f=−e→v×→B
なので、左向きに働くことになります。

電子の電荷は負であることに注意してください。純粋に →v×→B は右側ですが、電子の電荷が −e であり負なので、→f は左側になります。
というか、こんなややこしく考えずとも、単純に
+e の電荷が電流方向に流れている
と考えてよいです。
電子は導体棒に N2=nSl だけ入っている
上記は電子1つが受ける力です。導体棒が受ける力は電子が受ける力の総力ですので、導体棒中にある電子の個数を数えます。
いま、導体棒の電子密度は n [個/m3] と与えられていますので、これに導体棒の体積 V2 を掛ければ電子の個数 N2 になります。V2=Sl なので、
N2=nV2=nSl
です。(式(1)と区別するために添え字を変えました)
導体棒が受ける力 F は電子が受ける力の総力:→F=N2→f=l→I×→B
→f と N2 が求まったので、両者を掛けて、
→F=N2→f=−enSl→v×→B=l→I×→B(∵→I=−enS→v)
まとめ
以上、誘導起電力と電磁力を統一的に理解しました。誘導起電力は巨視的見方である電磁誘導の法則と微視的見方であるローレンツ力の両方から同じ結果を導きました。電磁力は微視的見方であるローレンツ力、すなわち電子1つにかかる力から始めて導体棒全体にかかる力にまで引き上げました。
このように全体像が理解できていれば、公式を覚えるのも比較的楽ですし、万一忘れてしまっても基本の公式から自分で導いて思い出すことも可能です。
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