過去問は解いて終わりではなく始まりです。過去問には学習すべき「核」が詰まっています。早い段階で触れることで何が重要なのかが見えてきます。そこでここでは解いて終わりの過去問ではなく、復習して実力をつける過去問を目指しました。各問題の中で本質的な部分を厳選し復習しやすくしています。
同様に数学もありますので合わせてご覧ください。
第1問-1 モーメントのつりあい
直角二等辺三角形の板 ABC がある。
点 B に水平右向きの力 F を加える。
板が点 A のまわりで回転しない F の最大値を求めよ。

力 F を増してもしばらくは板は動きません。それは、力がつりあい、モーメントもつり合っているからです。そのイメージがこちら↓。モーメントは図の平行四辺形の面積です。なお、アニメーションでは説明のため座標値を設定し、具体的な数値で表しています。
垂直抗力 N1 はモーメントがつり合うようにその作用点が変化していて、右端まで行った後は支えられなくなるため、回転してしまいます。したがって、右端まで行ったところが力 F の最大値です。
解
力 F が最大のとき、図の状態でつり合っている。

点 A の周りのモーメントのつり合いを考えて、
F×L=Mg×23L∴F=2Mg3
解説
アニメーションの解説
力の描画
「重力」「接触」を書きましょう。重力は重心から Mg。接触しているものは床と壁ですから、床から N1、壁から N2 と書きます。
力の描画のコツは↓の記事で取り扱っています。
力のつり合い(=運動方程式)
上下方向の力のつり合いより、
Mg=N1
左右方向の力のつり合いより、
F=N2
これを表すように上のアニメーションの右上の「力のつり合い」の図が書かれています。
モーメントのつりあい
回転軸はどこを定めてもよいですが、N1 や N2 といった未知数が消えてくれる点 A を取るのが無難ですし、回転するとすると点 A が回転軸になるのでイメージもしやすいです。
モーメントは
力の大きさ × 腕の長さ
ですが、これはつまりはアニメーションで示したような平行四辺形の面積のことです。
回転軸はどこでもよい
モーメントの計算で回転軸は任意です。例えば、別の回転軸として重心をとった場合のアニメーションはこのようになりますが、同じ結果を得ます。
この場合のモーメントは、
- 時計回りには、F と N2 が、
- 反時計回りには、N1 が
生じさせていることに注意すると、
F×23L+N2×13L=N1×23L
となりますが、N1=Mg ですし、N2=F なのでこの式は、
F×L=Mg×23L
となり、同じになります。
第1問-2 気体分子運動論
太陽の中心部の温度は約1500万Kであり、そこには水素原子核やヘリウム原子核が電子と結びつかずに存在している。その状態を、単原子分子理想気体とみなすとき、
(1) 太陽の中心部にあるヘリウム原子核1個あたりの運動エネルギーの平均値は、温度300Kの空気中に、単原子分子理想気体として存在するヘリウム原子1個あたりの運動エネルギーの平均値の何倍か。
(2) 太陽の中心部で、水素原子核1個あたりの運動エネルギーの平均値は、ヘリウム原子核1個あたりの運動エネルギーの平均値の何倍か。
分子の運動エネルギーの総和が内部エネルギーです。単原子分子理想気体では内部エネルギー U は
U=32nRT
ですので、

の関係があります。つまり、
分子の運動エネルギー ∝ 温度
です。
また、運動エネルギーが温度に比例することにおいて原子の種類は式に現れていないです。つまり無関係です。
解
(1)
分子の運動エネルギー ∝ 温度
より、
1500×104300=5×104
つまり、5万倍。
(2)
分子の運動エネルギーは温度のみの関数なので、温度が同じなら運動エネルギーは同じ。よって、
1倍
解説
こちらの記事でじっくりと解説
問題文は長いが、単原子分子理想気体という条件を言いたいだけ
問題文が長くて少しうんざりしますが、単に単原子分子理想気体を言いたいために長くなっているに過ぎないです。そのことに気づくとあまり苦ではなくなります。「はいはい、単原子分子理想気体を言いたいのね」と優しい心で読めます。例えば、
- 原子核が電子と結びつかずに存在している。その状態を、単原子分子理想気体とみなす
- 単原子分子理想気体として存在するヘリウム原子核
といった具合です。いずれも「単原子分子理想気体」であることを説明したいだけです。しかし入試問題として出題するには正確を期さないといけないので、どうしても文章が長くなってしまいます。
「運動エネルギーの平均値」もそういう意味では同様です。わざわざ「平均値」をつけている点です。分子の速さは同じではなくバラバラなためですが、そのような事情を理解しておけば、自分の頭の中では難しく考えずに単に「運動エネルギー」として考えた方が理解が容易です。
単原子分子理想気体とはどういう気体か?
単原子分子理想気体という言葉には二つの条件が含まれています。
- 単原子分子
- 理想気体
です。
単原子分子
文字通り一つの原子のみから成る分子です。ヘリウムやアルゴンなどの希ガスがそれにあたります。窒素や酸素などは O2, N2 と2原子分子であり、単原子分子ではありません。
単原子分子でない場合、分子の内部エネルギーには分子の回転や振動などのエネルギーも含まれ、複雑です。(なので、入試問題では出てこないはず。出てきても丁寧な誘導があるはず。)
理想気体
分子間の相互作用が無い状態を指します。平たく言うと、ぶつからないということです。つまり、分子密度が小さい(希薄)ということです。通常我々が暮らしている空気では、体積比で1/1000くらいの密度ですので十分に希薄です。
第1問-3 全反射
図において臨界角 sinθc を求めよ。

屈折の法則の基本は次の図です。

これが連続したに過ぎません。
解
下図より、

sinθc=1n1
解説
θc を実際に求めてみます。水の屈折率は n1=1.33 なので、
sinθc=11.33
となり、これを満たす θc は、
θc≃49∘
です。つまり、49∘ よりも浅い角度で水中から眺めると全反射してしまい外を見ることができません。このように見えます。
スネルの窓 – Wikipedia
屈折の法則をホイヘンスの原理からイメージで捉える記事を↓に書きました。
第2問-4 運動量保存の法則
ペットボトルの中には水と圧縮空気が入っている。t=0 で水の噴射を開始した。短い時間 t=Δt で質量 Δm の水が速さ u で噴出した。
このとき、ペットボトルの速さ Δv を求めよ。
ただし、Δm は M に比べて小さいため、M−Δm≃M と考えてよい。また、重力や空気抵抗は無視する。

解
運動量保存の法則より、
0=MΔv−Δmu
∴Δv=uΔmM
解説
この問題は、実際のロケットの発射にも使われる式です。ツィオルコフスキーのロケット方程式として知られています。
第4問-1 電場と電位
真空中に大きさが同じで符号が逆の二つの点電荷が作る等電位面の模式図を書け。
解
下図の右側。

解説
電位の形
電位の式は、
V=kQr
です。詳しくは下記↓の記事の「外力が電荷の場合:電位」を見てください。
これは r(>0) についての反比例の式です。ただし、r は距離なので必ず正です。この問題では負号が逆の二つの電荷があるので、Q が正のものと負のものとが少し離れた場所にあり、従って上の図のようになります。
実際の選択肢
実際の問題では適切な図を次の6つの選択肢から選びます。このイメージができていれば迷うことなく一発で選択できます。もちろん、②です。

まとめ
過去問というと1回きりのやり切りような気がして、解くのがもったいないような気持ちになりますよね。なんか大事なスクラッチを削る、みたいな。決してそんなことは無いと思います。そのような機会は今後たくさんあります。予備校はたくさんあるので、その模試などに挑戦するなどです。それよりは、このような過去問に触れることで、何がポイントになってくるのかという「核」を早い段階でつかむことが重要だと思います。そこから周辺に知識を伸ばしていく戦略が効率的だと思います。
そのため、ここではその「核」になる問題の厳選と「周辺知識」に手が伸びる解説をしてきました。ぜひここの問題を繰り返し復習することで、的を射た、しかも深みのある学習をしてください。
2025年度のものも追加しました。
コメント