それは、横と縦のスケールを伸縮することにより、より簡単な関数形にしているからです。そのことをこのアニメーションをみて確かにそうだと言えるよう、順を追って確認していきます。
置換積分では何が行われているのか
結論を言えば、横と縦のスケールを伸縮することにより、より簡単な関数形にしている、ということになります。そのことを次の簡単な例で確認します。
問題設定:∫10x2dx
すごく単純な例で置換積分では何が行われているのかを確認します。
∫10x2dx=13[x3]10=13
を
t=2x
で置換します。この置換は説明の為だけのもので計算上のうま味は無いですが、横と縦のスケールを伸縮するということを理解するために取り上げます。
すると、
- y=x2=14t2⟵y の値は同じ
- dt=2dx⟵ 横のスケールが異なる
- x|0→1
t|0→2⟵ 横のスケールが異なる
なので、
∫10x2dx=∫2014t212dt
です。もちろん置換しても、
∫2014t212dt=1813[t3]20=13
なので、当然ながら置換しないものと一致します。
y の値は同じで横のスケールが異なるグラフ
ではここで、t=2x と置換したときのグラフを書いてみましょう。x|0→1 と動くとき、t|0→2 と動きますが、面積がどうなるか、短冊で確認します。
y の値は同じで x の進み方が2倍になっています。つまり、短冊の幅が2倍になっているので面積は2倍です。この2倍というのはもちろん、t=2x と置いたためで、dt=2dx ということです。
このように、置換したそのままだと、
y の値は同じで横のスケールが異なるグラフ
ができ、
面積は横のスケール分だけずれる
ことになります。
よって、面積を同じにするには横のスケール分だけ調整する必要があります。
その調整を縦の長さで
行います。
横のスケール分の調整を縦の長さで行う
この例の場合、横のスケールは2倍になったので縦の長さを 12 にすればよいことになります。これは横のスケール dt=2dx から簡単に求められ、
dx=12dt
となることからわかります。これを用いて縦の長さを調整するイメージは下記の動画です。
これにより、青の面積は赤の面積と同じとして求められるようになりました。
今一度、式(1)の両辺を上の動画と見比べてください。青の面積が(1)の左辺で、赤の面積が(1)の右辺です。
両方をひとまとめにして表現してみる
置換したことによる横と縦のスケール伸縮の様子をひとまとめにして表現してみます。そのため、横のスケールの伸縮について、もう一つグラフを追加します。

いま t=2x で置換したわけですが、それをグラフにしています。横軸が t、縦軸が x であることに注意してください。
x が dx だけ、例えば 0.1 だけ増えれば、t は 2dx だけ、つまり 0.2 だけ増えるということを直感的に理解するための図です。
このグラフが理解できたところで横と縦のスケール伸縮の様子を見てみましょう。
おさらいすると、
- 求めたいのは左側の青い面積
- それを x=2t で置換
- 置換したことそれ自体によっては、y の値は変わらないが、その分、横幅が変わる
(この例だと2倍になる) - 面積を同じにするため、横幅が変わった分だけ y の値を調整する
(この例だと 12 にする)
その結果、赤色の線である、
y=18t2
が得られ、赤の面積が青の面積と同じになる、というわけです。
今の例では赤の線に置換をしても元の青の線とあまり変わらずありがたみが無いですが、何が行われているのかを分かりやすくするため、この例を出しました。ありがたみは次の章で味わいます。
なぜ置換するとうまく積分できるのか
その結論は先ほども述べた通り、横と縦のスケールを伸縮することにより、より簡単な関数形にしているからですが、そのことを実際に確認します。
例題1:∫π20sinxcosxdx
下図のイメージを解答で確認します。置換した結果、y=t の積分になります。
解
t=sinx とおくと、
dt=cosxdx
x|0→π2
t|0→1
よって、
∫π20sinxcosxdx=∫π20sinx⋅cosxdx=∫10tdt=12[t2]10=12
これを、WolframAlphaで確認します。確かに 12 で合っていることが分かります。
例題2:∫102x√x2+1dx
下図のイメージを解答で確認します。置換した結果、y=√t の積分になります。
解
t=x2+1 とおくと、
dt=2xdx
x|0→1
t|1→2
よって、
∫102x√x2+1dx=∫10√x2+1⋅2xdx=∫21√tdt=23[t32]21=23(2√2−1)
これを、WolframAlphaで確認します。確かに 23(2√2−1) で合っていることが分かります。
例題3:∫101x2+1dx
下図のイメージを解答で確認します。置換した結果、y=1 の積分になります。
解
x=tanθ とおくと、
dx=1cos2θdθ
x|0→1
θ|0→π4
よって、
∫101x2+1dx=∫π401tan2θ+1⋅1cos2θdθ=∫π401dθ=π4
これを、WolframAlphaで確認します。確かに π4 で合っていることが分かります。
まとめ
なぜ置換するとうまく積分できるのか、を見てきました。それは、横と縦のスケールを伸縮することにより、より簡単な関数形にしているからです。
そのことを、まずは ∫10x2dx を t=2x で置換するという、計算上のうま味は無いですが仕組みがよくわかる例で確認しました。
その後、実践的な例題を用いて、実際に置換によりどのように元の関数が変形されるのか、を確認しました。
このイメージを持って置換積分に取り組むことで、より納得しながら計算ができるようになれば幸いです。
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