応用編では高校入試問題を取り上げます。少し難し目の問題をアニメーションを用いて理解します。問題文の言っている意味がこのアニメーションのようにイメージできるようになれば、どんな問題でも解ける自信へとつながるでしょう。
また、↓の記事もぜひ見てください。こちらは本稿を含む頻出難問を5つの「型」「パターン」に分類して解説しています。こちら↓を見てから本稿に戻ると、なぜか本稿が理解できるようになっています。
問題1. 難問中の基本
図のように、放物線 y=ax2y=ax2 (a>0)(a>0) 上に2点 AA, BB があり、xx 座標はそれぞれ 2,−42,−4 で △OAB△OAB の面積は 2424 である。このとき、
(1) aa の値を求めよ。

(23年 東海高校 (1)のみ。一部改変。(2)(3)は三平方の定理との複合のため省略。)
aa の値が決まれば青の二次関数のグラフが決まり、従って △OAB△OAB も決まり面積 SS も決まる、という流れで 下図のイメージです。
aa の値が決まれば二次関数のグラフが決まる、というイメージは↓の記事で述べています。
解. △OAB△OAB を求める問題は難問中の基本
点 AA, BB は y=ax2y=ax2 上の点であるから、その座標はそれぞれ A(2,4a)A(2,4a), B(−4,16a)B(−4,16a) と置ける。
直線 ABAB の切片 PP の座標を求める。
ABAB の傾きは −12a6−12a6、すなわち −2a−2a なので、直線 ABAB の式は、
y=−2a(x−2)+4a=−2ax+8a
∴P(0,8a)

よって、
△OAB=△OAP+△OBP=8a×2×12+8a×4×12=24a
これが 24 になればよいから、
a=1
解説1. 直線の式について:一行で楽に求める方法
傾きが求められれば直線の式は一行で求められます。公式風に書くと次の通りです。
傾きが a で点(〇, □)を通る直線の式は、
y=a(x−〇)+□
ちょっとしたことですが、これができると楽です。
これについては↓の記事で詳しく解説しています。
解説2. 点 P の別解:直線の式を求めない方法
頂点 P の座標を求めるには必ずしも直線の式を求めなくとも次のような図を書いて求めてもよいです。

すなわち、点 P は AB を 3 分割した点上にあり、AB の縦の違いが 12a なので、A から数えて 4a だけ上側、B から数えて 8a だけ下側にあります。
解説3. △OAB の面積の求め方はマスターしよう
解答に示したように、△OAB を △OAP と △OBP の和としました。つまり、
△OAB=△OAP+△OBP
です。このテクニックは非常によく使います。
↓の記事の「パターン0」です。
問題2. (2)は等積変形:難問の頻出問題
図のように、各辺が x 軸と y 軸に平行な正方形 ABCD, CEFG, FHIJ がある。点 A は y 軸上にあり、関数 y=ax2, y=x2, y=19x2 のグラフは、それぞれ点 C, F, I を通る。3 つの正方形の面積がすべて等しいとき、

(1) a の値を求めよ。
(2) 点 B を通る傾き −2 の直線上にあり、x 座標が正である点 P について、△PBJ の面積が四角形 ABIJ の面積に等しくなるとき、点 P の座標を求めよ。
(22年 東海高校)
(1)は、正方形が彷徨っている情景が浮かびますか? この図のイメージです。
その中で 3 つの正方形の面積がすべて等しいときに、「ここだ!」という感じで止まります。面積が等しい正方形なので全ての辺の長さが等しいことを利用します。
(2)は、(1)を解いてから考えましょう。三角形の面積は、
三角形の面積 = 底辺 × 高さ ÷ 2
ですが、使いやすくなるように工夫することが大事です。「問題1」もそうで、三角形を二分割する工夫をしました。この問題の場合は「等積変形」です。動画の緑の三角形が移動している様子のことです。
解. (1) a の値を求めよ。

点 C の x 座標を m と置くと、3 つの正方形の面積がすべて等しいということから点 C, F, I の x 座標はそれぞれ m, 2m, 3m と置ける。すなわち、
C(m,am2),F(2m,(2m)2),I(3m,19(3m)2)
となる。

y 座標についても同様に長さが等しく m なので、
am2−(2m)2=m(2m)2−19(3m)2=m
である。(2)を変形して、
4m2−m2=m3m2−m=0m(3m−1)=0
m≠0 より、m=13
これを(1)に代入して、
19a−49=1319a=79
∴a=7
解. (2) 点 P の座標を求めよ。
B の座標を求める
(1)より a=7, m=13 と分かったので、
B(0,am2)=(0,7×(13)2)=(0,79)
である。

四角形 ABIJ の面積を求める
四角形 ABIJ は、
- 底辺:AB=m=13
- 高さ:I の x 座標 =3m=1
より、
∴四角形ABIJ=13×1=13

△PBJ の面積は難しいので等積変形で求めやすくする
△PBJ′=△PBJ となる点J′ を求める
点J′ を、点 J を通り傾きが −2 の直線と y 軸との交点とすると、△PBJ の面積は △PBJ′ に等しい。
点J′(0,229)

△PBJ′ の面積を求める
P の座標を (x,y) と置くと、△PBJ′ は
- 底辺:J′B=229−79=159
- 高さ:P の x 座標 =x
△PBJ′=159×x×12=56x
△PBJ′ の面積 = 四角形 ABIJ の面積
この両者が等しいということから、
56x=13∴x=25
点 P は y=−2x+79 上にあるから、
y=−2×25+79=−145
∴P(25,−145)
解説1. 三角形の面積を等積変形で楽に求める
高さが同じなら面積は同じです。頂点を通り底辺に平行な線を引けば、その線上を頂点が動く限り、高さは変わりません。この変形自体は二次関数とは別のものですが、二次関数と絡めて出題されるケースが多いです。
↓の記事の「パターン1. 等積変形」をご覧くださいませ。
解説2. 点 J′ をより簡単に求める
直線の式を求めることによって切片を求めてもよいですが、ここではより簡単に図を書いて求めます。

つまり、点 J から傾き −2 でさかのぼっていけばよく、点Jの座標は (1,49) なので、
49+2
で求められます。
問題3. (2)は四角形の分割だが等積変形:この発想に至れるかがミソ
図のように、関数 y=ax2(a>0) のグラフ上に点 A をとる。ただし、点 A の x 座標は正とする。点 A を、y 軸を対称の軸として対称移動をした点を B とすると、△OAB が 1 辺の長さが 1 の正三角形になった。また、OA=OC となる点 C を y 軸の正の部分にとる。このとき、

(1) a の値を求めよ。
(2) 点 A を通る直線 l によって四角形 OACB が面積の等しい 2 つの図形に分けられるとき、直線 l と辺 OB との交点の座標を求めよ。
(21年 東海高校)
問題文の全体像はこの図のイメージです。解説のところで一つ一つ区切って確認をします。
ここでも「問題2」で見られたのと同様の「三角形の面積を求める工夫」が見られます。等積変形で、緑の三角形が動いている部分です。
解. (1) a の値を求めよ。
△OAB は A と B の y 座標が同じで一辺の長さが 1 の正三角形ということから、点 A の座標は
A(12,√32)

放物線 y=ax2 に点 A を代入して a を求めると、
√32=a(12)2∴a=2√3
解. (2) 四角形 OACB が面積の等しい2つの図形に分けられる
まず、四角形 OACB の面積 S1 を求める。AB=1, OC=1 より、四角形 OACB の面積は
S1=1×1÷2=12

従って、求める交点を D と置くと △OAD の面積 S2 は
S2=14
となるわけだが、この点を求めるために面積が S2 となる x 軸上の点 D′ (のうちで x<0 のもの) を求めると、
D′(−1√3,0)
である。
(→D を求めたいのに D′ を求める理由:等積変形_解説3)

求める点 D は、D′ から OA と平行に引いた直線と OB との交点なので、
D(−√36,12)

解説1. 点 A の座標について:角度既知なので座標は出る
△OAB は正三角形なので、OA の角度は 60∘ です。この直角三角形が思い浮かべば、点 A の座標は出せますね。

解説2. S1 について:三角形に分割するのは常套手段
下図のような三角形に分割していると思えば面積はすぐに求められます。

すなわち、
S1=1×12÷2+1×12÷2=1×(12+12)÷2=1×1÷2=12
結局、対角線同士の積を2で割ればよく、解で示したようになります。
解説3. D を求めたいのに D′ を求める理由:等積変形
平行線を用いて面積を保つテクニックはよく出てきます。問題2もそうでした。x 軸上なら面積 S2=14 となる点を求めるのは容易です。

確かに OD′ の長さを 1√3 にすれば、
S2=1√3⋅√32÷2=14
となり、目的を達成できています。
なお、1√3 は分母が無理数(√の数)ですが、途中の計算段階なので有理化する必要はないです。
解説4. 点 D について:求め方は様々
点 D は文章で書けば解に書いた通りですが、求め方にはいくつか方法があります。
図を書いて求める
OA は x 軸と 60∘ を成し、OB もまた x 軸と 60∘を成しているので、△ODD′ は正三角形です。

青の直角三角形に着目すると、底辺の長さが 12√3 なので、高さはその √3 倍の 12 となります。よって、
D(−12√3,12)
と求まります。ただし、解答用紙に書くときには有理化をしておく方がよいでしょう。
直線の交点として求める
直線 OB の式は
y=−√3x
また、直線 D′D の式は
y=√3(x−1√3)
よって交点の座標は次の連立方程式の解。
{y=−√3xy=√3(x+1√3)
これを解いて、
D(−12√3,12)
解説5. 直線 l の方程式について:問題にはないが練習で
実際の入試問題ではここまで要求されていなかったですが、練習として求めてみましょう。直線の式は↓の記事で簡単に求める裏技を解説しています。
解
求める直線は点 A(12,√32) と点 D(−12√3,12) を通る直線。
求める直線の傾きは、
傾き=√32−1212−(−12√3)=√3−12√3+12√3=√3−1√3+1⋅√3=√3−1√3+1√3−1√3−1⋅√3=(√3−1)22⋅√3=3−2√3+12√3=4−2√32√3=√3(2−√3)=2√3−3
よって、求める直線の式は、
y=(2√3−3)(x−12)+√32=(2√3−3)x−2√3−32+√32=(2√3−3)x+3−√32
まとめ
二次関数の応用問題を実際の入試問題で見てきました。二次関数は入試では頻出です。しかも、面積を絡めて出題するパターンが圧倒的多数です。しかし、「型」をしっかりと練習しておけば解けるようになりますので、今回の問題が難しいと感じた方はもちろん、解けたよ、という方もより土台をしっかりと身につけるため、下記の記事↓も見てみてください。
また、頻出の面積問題に注目した下記の記事↓も見てください。難関校の良問を選りすぐりました。
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